あの日から1年..
姫田小夏の新刊
『ポストコロナと中国の世界観』
※1月23日(土)発刊予定
武漢ロックダウンから1年。コロナ禍で加速する中国の世界進出を描く渾身のレポート。
目次
第1部 新型コロナウイルスが直撃した中国
第1章 中国の体制問題と国民の心境の変化
第2章 逆転する先進国と中国の関係
第2部 民主と独裁、米中の価値観の対立
第3章 西側と中国、世界に2つの価値観
第4章 ポストコロナで変わる世界
第5章 香港問題と中国
第6章 デジタル覇権と中国第
3部 中国が変える世界のビジネス環境
第7章 アジアで起きる地殻変動
最終章 東洋に共通する価値観を考える
筆者からのひとこと
コロナ禍に見舞われる世界情勢にあって、“既成の概念”が揺らいでいます。さまざまな側面で「二面性」が浮き彫りとなり、1つのアングルや、これまでの常識だけで白黒判別することが難しくなっていることを痛感します。特に中国という隣国に対して、また米国という超大国に対して、これらを実感される方も多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの発生と感染拡大から1年が経った今、私のもとに「中国の対応をもっと分析するべきだったのではないか」という日本の友人からのメッセージが数多く届きます。「中国は共産党国家だから封じ込めることができた」というのが日本の定説であり、それだけに冷静な分析を遠ざけてきたといえます。何事に対しても必要なのは、何を批判し、何を評価するかの軸を持つことですが、日本のネットメディアではこの議論がなかなか難しい。だからこそ私は、一緒に考えていただける読者の皆様に向けて“紙の本”を出したわけです。
政治体制の違いを超えて、中国に学べる点が存在するのは事実です。一方で、その中国の、近年に見る対外的な膨張には身構えざるを得ません。本書では、そこに投影される“中国の世界観”について思考しました。特にアジアの国々にとって中国は、経済的メリットをもたらしながらも、その影響力は「諸刃の剣」だといえます。その「諸刃」ゆえに、「経済が潤うから」という理由での中国とのタッグは、アジア諸国が慎重になっています。
本書の後半ではアジアで起こる「人の生活」と「ビジネス環境」の“地殻変動”を取り上げました。私は、アジア・ビズ・フォーラムを主宰しており、毎月1回、アジア社会に通暁するビジネスマンをはじめ、大学教授、エコノミスト、教育関係者、ジャーナリストなどさまざまな分野のエキスパートにご参加を頂き、オンラインでかなり先端を行く議論を行っています。本書第3部はこうしたエキスパートたちの問題意識も反映されています。
一方で、今の中国において、国も人も見落としているのは、中国の古代文明がもたらした中国哲学観です。西側の価値観と同じになれないのならば、中国なりの「人類普遍の価値観」を打ち出すべきだろうと考えます。私は儒学の専門家ではありませんが、「中国なりの価値観」を思考し、本書で取り上げました。儒学もまた人の幸福につながる要素があります。現代社会における儒学研究の進歩が待たれます。
このたび、多くの方々の取材協力を得て出版にこぎつけることができました。理性ある、また良識ある大先輩たちは、常に真摯に筆者の対談に応じて下さいました。ここに改めて感謝の気持ちをお伝えいたします。
2021年1月 ジャーナリスト 姫田小夏